建築の木造化推進と火災
2024-02-23


温暖化対策のひとつとして建築物の木造化が官民で推進されています。
長らく木造といえば2階建て以下の住宅が主でしたが、法律の改正などにより近年では10階建て以上の大規模な建築も木造で建てられるようになりました。
木造で大規模な建築が建てられるようになったのは火災に対する考え方をよく言えば柔軟に考えるようになったからです。
ただ昭和に学校を出て資格を取った私などは本当にいいのかなという思いが頭の隅からずっと離れませんでした。

建物は階数により火災時に避難できる時間(1〜3時間)だけ崩れ落ちなければよいとする考え方で、これは法規制上は木造も鉄筋コンクリート造等も同じです。木造の場合は柱などを上記時間だけ構造上保てるように石膏ボードなどの燃えにくいもので被覆したり、燃えても避難する上記時間が稼げるように断面を大きくします。一見するとこれでいいように思えますが、木造と鉄筋コンクリート造が決定的に違うのは、木造は最悪法規制の上記1時間とか3時間以上経てば燃えて崩れ落ちてしまう可能性があるのに対して、鉄筋コンクリート造は内部が燃えても崩れ落ちはしないということです。コンクリートは高熱にさらされれば強度が落ちるので火災にあった建物を改修等してそのまま使い続けることはできませんが、適切に防火区画をすれば火災を建物の一部にとどめることができ、建物が崩れなければ周囲への延焼もしにくくなります。
こんなことをいま改めて書こうと思ったのはたまたま下記のニュースに接したからです。


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「スペイン 14階建ての集合住宅全焼 4人死亡 19人と連絡取れず」(NHKニュース 2024年2月23日 16時25分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240223/k10014368701000.html


このニュースだけではどの程度防火対策がなされていたのか、どのような状態で鎮火したのか詳しいことはわかりませんが、少なくとも日本で鉄筋コンクリート造などの共同住宅が、このように建物全体が燃えてしまうような火災は私の記憶にはありません。(客室間の防火区画ができていなかったホテルが全焼し多数の犠牲者が出た例はありました。)

大規模・高層建築物の火災に限らず、木造建築物の火災に対する危険性は常にあって明治以降都市の不燃化が叫ばれ、レンガ街とか鉄筋コンクリート造の防火帯建築などがつくられました。先月の能登半島地震でも大規模な火災が発生しましたが、(非現実的な仮想の話ですが)もしあの木造建築群の多くが鉄筋コンクリート造等であったらあのような大規模な火災にはならなかったでしょう。

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